特例子会社とは、障害者の雇用を促進させるため、企業に対して雇用
しやすい特別な配慮を構築し「障害者の雇用の促進等に関する法律」
第44条の規定により、一定要件を満たし厚生労働大臣の認可を受け、
障害者法定雇用率の算定上において、親会社の一事業所と見なされる
子会社(障害者を集約的に雇用する会社)を言います。
では、なぜ、このような制度が設けられたのでしょうか?
それは、障害者の誰もがごく普通に地域で暮らし、地域の一員として
共に生活できる「共生社会」実現の 理念の下、すべての事業主には、
法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。
しかし、企業によっては、障害者が働きにくい職種や既存設備である
など、ハード面ソフト面の課題解決が必要とされていたのです。
企業における、一定割合の障害者を雇用しなくてはならない義務の
基本を障害者法定雇用率といいます。
現行(令和3年3月1日以降)の民間企業の障害者法定雇用率は2.3%。
対象となる企業の総従業員数は43.5人以上です。
国・地方公共団体は2.6%、都道府県等の教育委員会は2.5%。
特殊法人等は2.6%、全体的に0.1%の引き上げとなります。
法定雇用率の詳細はコチラ(PDF:67.5KB)
ここで重要なポイント、特例子会社とは障害者雇用促進法上で特例な
だけであって、それ以外は普通の会社(営利法人)であることです。
福祉工場や福祉作業所などといった非営利組織ではありません。
特例子会社は「営利法人=収益を出す法人」であり、株式会社などの
形態になります。特例子会社の設立には、障害者雇用のための様々な
環境を整備するなど、一定の要件を満たし、親会社となる法人の管轄
のハローワークに必要書類を提出して厚生労働大臣の認可を得れば、
認可を受けた子会社の障害者雇用は、親会社の一事業所とみなされて
親会社の障害者法定雇用率に算定されるのです。
特例子会社は親会社と異なる業種の場合もあります。親会社の業種が
障害者の雇用に結びつきにくいなどの理由があげられます。
実は、特例子会社制度は40年以上も前に誕生していました。
一番古く認定を受けた特例子会社は、シャープ特選工業株式会社(大
阪市阿倍野区)で親会社はシャープ株式会社。認定年月日は昭和52年
3月31日。オムロン太陽株式会社(大分県別府市)で親会社はオムロ
ン株式会社など、昭和の時期に大手企業の名が連なっています。
平成29年6月1日現在では、全国で特例子会社は464社。
7年後の令和05年6月1日現在では598社に増加しました。
障がい者の社会参加・自立就労に関する理解の輪が広がっています。
特例子会社一覧/平成29年はコチラ(PDF:463KB)
特例子会社一覧/令和05年はコチラ(PDF:481KB)
当初は身体障害者が雇用の主な対象でしたが、その後、知的障害者中心の特例子会社が
増えてきました。最近では、新たに認可された特例子会社の約半数は、知的障害者だけ
あるいは従業員の圧倒的多数が知的障害者を雇用する特例子会社です。
理由のひとつとして身体障害者・知的障害者の雇用情勢の変化があります。
都市部では建造物のバリアフリー化、身体障害者向けの職種や雇用管理方法など企業は
様々な取り組みを行い身体障害者の雇用がかなり進みました。歩行・移動・作業環境等
の課題がクリアできれば、常用雇用者と変わらずに職務をこなせる可能性が高いことも
ありました。しかし、知的障害者については、従来の採用や雇用管理の方法では難しく
ほとんど雇用されていませんでした。
平成25年(2013年)障害者自立支援法に代わり障害者総合支援法が施行された背景に
は知的障害者・精神障害者の就労支援および社会生活支援の強化を目指すものがあり、
知的障害者のための特例子会社を設立する方向に向かったと考えられます。
特例子会社の存在は障害者の就労支援や障害児教育の担当者にとって
非常に魅力的な就労先の選択肢が増えました。
雇用形態としては障害者の就労能力の違いで非正規雇用も多いですが
最近では、特例子会社で働いている知的障害者数が福祉的就労として
比較的高収入を得られる(月額平均6〜7万円程度ですが)福祉工場や
就労継続支援A型事業施設などで働いている知的障害者数をすでに追い
越しており、注目を浴びています。
また、共同生活援助施設(障害者グループホーム)が全国各地に拡充
されて来たことで、障害者の就労先が自宅から遠く離れた場合でも、
居住地を就労先の近くに求めることが可能になってきました。
(共同生活援助:個々の居室・食事・入浴・夜間の見守りなど提供)
企業が特例子会社を設立する大きな理由は次の3つです。
(最近では知的障害者の雇用割合が大きくなっています)
(1)法定雇用率の算定に反映される。
親会社の障害者法定雇用率アップが一番の目的です。雇用率がアップすれば、
親会社の「障害者雇用納付金」が無くなるか減るワケです。
(2)企業のイメージアップ
以前は「特例子会社は障害者を差別する制度である」と批判されたこともあって、
イメージアップになるとは考えられませんでした。しかし、当事者の福祉団体や福祉関
係の専門家は特例子会社の重要性を認識するようになり、このような批判は無くなりま
した。その後は「障害者のための会社を設立している」と受け止められ、企業のイメー
ジアップにつながるようになりました。
(3)柔軟な経営が可能になる
障害者雇用促進法上では親会社の一事業所と見なされる特例子会社ですが、あくまでも
別法人です。特例子会社の制度が登場する以前では、親会社の人事に関するルールが、
障害者雇用の推進にブレーキをかけることも多かったのです。特例子会社制度によって
親会社とは別の採用方法・処遇・労働条件を設定することが出来るようになりました。
(1)障害者法定雇用率未達成企業の公表
雇用率未達成の企業名を原則公表する方向に向かっています。しかし、最近では対象に
なる企業数の裾野が広がったことで、民間企業のうち法定雇用率を達成した企業の方が
少ないという現状です。障害者雇用促進法では、社会連帯としての法定雇用率が定めら
れている以上、それを下回る企業は法律違反をしていることになります。「どの企業が
どらくらい法律違反をしているか国民が知る権利がある」ということでしょうか。
昨今の経済・景気情勢から考えると、対象とされる従業員数45.5人以上の企業で、特に
中小企業にはどう映るのでしょう。これは企業だけの課題では無いと考えられます。
(2)除外率制度の撤廃(経過措置としての段階的引き下げ)
障害者雇用促進法では、障害者の雇用が難しいと考えられる業種については、除外率を
設定していました。この除外率制度は「ノーマライゼーション」の観点から、平成14年
法改正を経て、平成16年4月に廃止されました。当分の間は、経過措置として、除外率
設定業種ごとに除外率を設定するとともに、廃止の方向で段階的に除外率を引き下げら
れています(法律附則)平成16年4月と平成22年7月、それぞれ、一律10%の引下げ。
たとえば、鉄道業の場合、現行30%の除外率が設定されており、総従業員数1,000人の
企業では22人の雇用が必要ですが、15.4人以上の雇用で法定雇用率達成となります。
22人ー(22人×除外率30%=6.6人)=15.4人
除外率制度と業種別の除外率一覧はコチラ(PDF:60KB)
(3)企業グループの法定雇用率算定
企業では分社化やカンパニー制、持ち株会社などといったことばを新聞などの経済欄で
よく見かけますように、経営行動が非常に複雑化して来て、ひとつの親会社にひとつの
特例子会社といった(いわゆる1対1の)これまでの制度は企業にとって非常に息苦しい
ものになってきました。そこで、企業グループ内で、特例子会社に対して一定の出資や
仕事の発注等の関連性がある場合、関連会社を含むグループ全体で法定雇用率の算定が
できるようになりました。
特例子会社として認定されるためには、以下の5つの要件があります。
1)親会社と特例子会社との間には特殊な関係がある(意思決定支配)
2)親会社と特例子会社との間には人的関係が緊密(役員派遣など)
3)障害者を新規に5人以上雇用し、なおかつ全従業員に占める障害者の
割合が20%を越え、さらに障害者のうち30%は重度身体障害者また
は知的障害者であること
4)障害者向けの雇用管理を適切に行うこと
5)その他、重度障害者の雇用促進や雇用の安定が確実に達成できると
認められること
特例子会社の設立・認定には、多くの申請手続きを必要とされ、障害のある従業員を
最低でも新規に5人以上雇用しなくてはならない という条件があります。
一般的には、人事・管理機能が整備された、規模の大きな企業が「特例子会社設立に
向いている企業」だと言われています。従業員規模からすると「1,000人以上」が
ひとつの目安と考えられています。
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